音楽のお小言

0079.「アニメ/ゲーム」10/19、2002

 「虹の咲く場所」(飯塚雅弓)。書くたびに注釈をつけているような気もするが、別にこの人のファンとかではない。歌は随分上手くなってきているし(初期がナニだった)、知名度からかスタッフ陣が良い所を突いてくるので実は思われているよりは音楽的な評価はもう少し高く下されて良いと思う。

 ただし、もちろんあの強烈な声質は10人のうち9人くらいは相成れないと思うので(牧場主も苦手)、あまりオススメする自信はない。それでも買い続けているのはシンガー・ソングライター大津美紀氏の曲が聴きたいがためだ。それのみ。飯塚雅弓に関しては100%大津美紀氏の曲が目当てだと言い切れる。「love letter」(3rdアルバム「so loving」に収録)でべた惚れして以来買い続けている。その後も「My wish」などもマキシ・シングル化され、曲数的には少なくても飯塚雅弓があれほどの位置にいるのは大津美紀氏のおかげだと本気で思っている。

 曲調に多少の差はあれ、大津氏の曲はとても真っ直ぐでけれんみが無く、何よりも安心できる。それは「癒し」という概念ではなく、ただ「安心」だと思うのだ。氏の個人HPをほぼ日参していると解るのだが、裏表のない性格がそのまま曲に表れている。この人はおそらく社会一般で良いとされている「形而的なもの」に惹かれているのではないか。往々にしてそれは裏切られることのほうが多いから、その哀しみを作曲という行為で表現している。

 なんてことはご本人にしか解りえないことなのでただのイチファンがどうこう言う事ではないとも思うけど。

 アルバム的には3rdの「so loving」、4thの「ARIES」(「My wish」収録)がオススメ。

0078.「J−POPS」10/15、2002

 今回は順番的に「DEEP RIVER」(宇多田ヒカル)。結論から言うと、今年も9ヶ月と半分。このCD以上に完成度、音楽的なレベルの高さを超える作品には巡り会えていない。そしてもう今年いっぱいくらいは仕方ないかな、とも思う。作品のどの要素をとっても超・一級品。これまで宇多田ヒカルに興味もクソも無かった人間の言葉だと受け取ってほしい。それくらい、作品が秘めるパワーは圧倒的でポテンシャルは全世界を軸にする。

 ここまで音の1つ1つに躍動感と清廉さを込められれば、もうほとんどこちら側の言及の余地を持たない。明らかに前向きなのに、自らの後方を疎かにしない、ほとんどパーフェクトな音楽に対する姿勢。「全米進出へ向けた挑戦状」という表現が実に巧妙で、この作品に限っては日本という閉塞的で狭義的な評価しか下されない市場に存在していていいものではない。そう言わせるほどに、日本の歌モノ作品としては孤高の位置にある。

 「今年出逢ったCDの中で1枚だけ、1枚だけ選んで無人島に持って行けるとしたら」。

 選択の余地はない。迷うという概念すら存在しないくらいに、「DEEP RIVER」だ。

0077.「トランス」10/15、2002

 トランスは最近聴いてないというか、買っても未聴のまま順番待ちしているCDの方が多い(最近趣向がややトランスから離れてきているのかもしれない。良いトランス・コンピ(ダッチ系)があったら教えてくださいまし)。でも最近はCD屋とか行ってもトランス系のCDが多くなってきていて個人的には良い感じではある。玉石混淆なのはトランスに限らずテクノに限らず音楽全部に言えることなので、自分の運の悪さを恨めと言い聞かせるようにしている。

 でもどのトランス・コンピCD見ても「stay」(WENDY PHILLIPS)が入ってるな。

0076.「その他」10/12、2002

 「どんな音楽が好き?」。よく聞かれる質問で、最も答えにくい質問の1つである。この「どんな」とは何を指すのだろう。ジャンルだろうか、音楽観だろうか、ただこの言葉に終始するのであれば、一応ジャンル的な答えを期待されてのものだと認識し、答えることにしている。トランス、と少し前までなら答えた。今は「日本の歌謡曲」である。つまり「J−POPS」。なにせ間違いなく頻度としては最も高いのだから。

 ちなみにここでは「日本語詞の日本人アーティストのボーカル曲」的な意味合いで使う。ただ、もっと違う意味合いでの質問なら答えも変わってくる。それにはまず自分が「どんな音楽が好きなのか」を知っておかなくてはならない。単純に「好きだ」というのは、その通りではあるし根源はそこなのだが、それは他人に説明する言葉としては足りなさ過ぎる。双方が納得するとは思えないのだ。

 牧場主は至って簡単だ。「知らない世界を教えてくれる音楽」に尽きる。これは音楽に限らずゲームでもそうなのだが、「こんな世界もあるのか」などと感嘆すると、もうそれに対する信者と化す。トランスの場合、というよりも興味を持った当時に聴いた「Flaming June」(BT)であれ「SALT WATER」(CHICANE)であれ、それまでの自分がいかに狭い価値観でモノ(この場合は音楽)を語っていたかを痛感した(「SALT WATER」は今まで聴いた全楽曲の中で「世界一美しい曲」である。これは今後変わらないと思う)。

 トランスというジャンルが自分の世界を広げてくれる結果となり、それ以降は基本的に「好きな音楽」=「トランス」となっていたわけだ。話は変わるがゲームの場合のそれはおそろしく少なく、3本もない。「AIR」であれ「EVE〜burst error〜」であれ、お話、作品としては申し分ないが、決して自分の中でのNo.1になることはありえない。さらにいえばRPGやSLGの場合はおそろしいまでに自分の中で評価は低い。

 「どんな音楽が好き?」。おそらくあなたもこの質問を投げかけた経験があると思う。

 返ってきた答えは納得できるものであっただろうか。

 その経験は、牧場主には、ない。

0075.「I’ve」9/24、2002

 さあ、やってまいりました!全く持って客観的に書く自信がありません、「Disintegration」(I’ve)。・・・でも発売から3ヶ月も経って客観的もクソも無いよなぁ・・・。売れに売れたようでなにより。結果から言うと予想通り満足のいくアルバムだった。下半期に入れます。

 1.涙の誓い(KOTOKO)
 2.flow〜水の生まれた場所〜(KOTOKO)
 3.I can’t get over your best smile(KOTOKO)
 4.FLY TO THE TOP(MELL)
 5.To lose in amber(島宮えい子)
 6.resolution of soul(KOTOKO)
 7.Wing my Way(KTOKO)
 8.DROWNING(MOMO)
 9.Belvedia(SHIHO)
10.君よ、優しい風になれ(KOTOKO)
11.Birthday eve(SHIHO)
12.disintegration(Lia)
13.王子よ〜月の裏から〜(島宮えい子)

 1、2、4、5、8、9、10、11の12曲中8曲がエロゲ主題歌。3がアニメ関係(主題歌?よく知らない)、6、7の2曲がコンシューマやPC一般向けゲームの主題歌、そして12、13の2曲がオリジナル。バランス的によくまとまっていると思う。特に2曲のオリジナル曲が嬉しい。

 このCDを聴くまで全く未聴だったのがオリジナルを含めて4曲。そういう言い方をすればコスト・パフォーマンスの悪いCDと言えるが、CD−DA音源として持っていたのが驚くほど少ないのでアリなのだ。というより全曲知った曲でCD音源として持っていたとしても買ったと思う。それが信者なのだ。信者の下にファン、ファンの下に好き、とかそういうマイ・ピラミッド。めっさどうでもいいデスね。

 ちなみにこのCDは1日置かず聴いてます。まだ。もちろん聴く曲とかはかなり限定されてきてるけど。

 各曲のコメントなどは次回に。

0074.「アニメ/ゲーム」9/8、2002

 「水溜りに映るセカイ」、「黒猫と月気球をめぐる冒険」(両、堀江由衣)。まず最初に断っておくと、オススメはしない。アニメ声なのはアタリマエとして、歌い方にもかなり難があるので、こういうCDを普段から聴く人でないと耐えられないと思う。・・・前提で苦言を吐いた意図が解る?こっからは褒める。サポート陣が異様です。「スターチャイルド」の主砲であるがゆえ、という穿った見方も正しいが、素直にビビる。

 牧場主、泉川ソラ氏が結構好きなんデスよ。というのは置いといて。詩、曲、演奏が盛り上げて「・・・さぁ!」と準備万端なところに堀江由衣なので、そういう意味で腰が抜けそうなCDなんだけど(全然褒めてませんよ?)、2ndではかなり修正されてきている。つーのも1stを無理矢理買わされて、2年ほど放置されていたんだけど、とあるコミックで褒めちぎってたので聴いてみようか、と。今でも1stは「・・・」という感じなんだけど、あれよこれよと2ndも買って、これはまあ、期待値が低かったからかもしれないが、割と良かった。

 本人を貶してばっかだけど、でも、歌が好きなんだなー、というのは少なくとも伝わってくる。拙いんだけど、パワーでごまかすんじゃなくて、そのパワーでこっちに委ねてくれてる感じ。嫌味がないんだね。声質にアクはあるけど。一生懸命な感じでそういうところは好感。あとはもう少し数をこなせば、あのプロデュース陣だしいいモノを作れるんじゃなかろうか、と。3rdは買います。出れば。

 お気に入りな曲も2枚あわせて2〜3曲あったんだけど、曲名忘れた。ごめん(?)。

0073.「J−POPS」9/8、2002

 ここのコンテンツは「CD」を見ながら一応順番で書くことにしている。前回は「バランソ」(つじあやの)。今回は「スパークル」(ガーネット・クロウ)だね。もう説明の必要が無いくらいブレイクした男2人、女2人のバンドで、ボーカリストが曲を書き、キーボード担当(名前知らない。てーか、全員知らない)の女性が詩を書く。色々見回ってきたが、このバンドのファンはどこを評価しているかというと、詩が多かった。

 なるほど。牧場主個人的な意見としては、このボーカリストの声質が好きじゃない。曲は好きだし、詩もかなり好きだ。中でもやはりこのアルバムに収録されている「夢みたあとで」の詩で沈没させられた牧場主がとやかく言う事ではないと思うが、しかし、この詩って男女が均等に評価を与える物ではないと思う。かなりの比率で女性過多。まあリリストが女性だから、という根幹は置いといて。

 ボーカルがどうも聴く者に対して壁を作ってるというか、独自の世界観でまとまりすぎてるというか。もう少しこっちに「降りてきて」欲しい感じがするのだが、ま、個人的な感想なのであまり気にしないで。CDとしては充分オススメ。歌謡曲界でかなりの位置にいると思う。

 アルバムとしてはメジャー・1st、「first anemoscope〜水のない晴れた海へ〜」の方がオススメ。

0072.「トランス」9/8、2002

 うわお、3ヶ月ぶりデシタ。「音楽大賞」のためにアップをしてこなかっただけで特にこれといった理由は無いんだけど。そういえばトランスとは死ぬほど関係ないが、宇多田ヒカルの結婚。素直におめでとう、と。19歳。サラブレッドで言えば4歳。確かに早いな(何か間違ってます)。

 お題は「サイケデリック」(V.A)。「I’ve」ファンなら大抵手に入れたであろうトランス・コンピなんだけど、さてどうだろう。「I’ve」さ、ってーのはほとんど感じられないと思う。そういう意味で実に期待を裏切るCDだと思うんだけど、そもそもトランスCDとして聴くと充分耳に耐える物であるのでそういう期待こそが間違いだろう。それなら「TRANCE MAGIC」シリーズを購入しよう。非常に解りやすいトランスで、「I’ve」ファンにオススメ。

 つくづくこういう「TRANCE/TECHNO」関係の作品を聴くと「FISH TONE」って何者なんだろうと思う。良い意味で。

 懐広すぎるよ、あの人の音楽。

0071.「その他」6/18、2002

 MDというものは、その人となりをよく表す。声優の保志総一郎(牧場主はファンです)は「ZABADAK」のファンであるということは以前どこかで書いた。彼の公式HPでは(勝手にリンク張ったらダメなんだって。何様なのか)彼自身が選んだ「ZABADAK」のMDが紹介されていた。それはそれはよく解るような解らないような曲がズラリと並んでいたが、牧場主も「ZABADAK」には多大な影響を受けているため何となくは理解できる。

 というよりも牧場主の音楽観は全部「ZABADAK」(現在「ZABADAK」というと吉良知彦個人ユニットの事であるが、当牧場で紹介する場合は上野洋子とのユニット時のこと)から来ている。これは死ぬまで変わらない。1つの不変である。

 牧場主ももちろん「ZABADAK」のMDは作ったが、全然重ならないでやんの。1〜2曲じゃなかったかな。少なすぎるぞ。

 ちなみに「I’ve」のMDは現在デフォルトで聴いている。市場が市場だけに中々CDから拾う事が出来ないのが困難だが、何とか名曲と言われる曲の何割かは所持するに至った。どうでもいいことだが一応列記してみる。こんな曲が好きだぞ、という程度だが。

・birthday eve
・Ever stay snow
・FLY TO THE TOP
・See You〜小さな永遠〜
・flow〜水の生まれた場所〜
・YA・KU・SO・KU
・prim
・over
・明日の向こう
・Dreamer
・Now and heaven
・Treating 2U〜wrap up style〜
・Never forget this time
・恋愛CHU!
・time rolls on...
・time rolls on...−FISH TONE mix−

 これ以外で死ぬほどMDに入れたいがCDとして持っていない曲としては「Belvedia」くらいだし、今度の3rdコンピに入るのでそれまで。もちろん分数的に泣く泣く諦めた曲だってかなりある。「uneasy」や「砂の風」などだ。こうして改めて見るとやはり「verge」の1枚目が4曲と一番多い。どうにも巷では「verge」より「regret」の方が評価が高いのだが、これだけは解らない。いや、「regret」もその辺のヘタレなCDより抜群に良質だが。

 ていうかあと「Dear Feeling」が異常。4曲全部が全然捨て置けないの。ああいうのを限定発売するのはぜひにやめていただきたい。他に「I’ve」のMD作ってる人のも見てみたいなぁ。曲単位で何が人気あるのかイマイチ解ってないし。

 あ、何だかほとんど「I’ve」ネタになっちまった。ぎゃあ。

0070.「I’ve」6/14、2002

 今後しばらく「Disintegration」(I’ve)ネタ。それはもう、今年いっぱいくらいは。さて、全13曲。やはりというか入って欲しかった曲の大半は入らなかった。そういった意味で残念な部分はあるが、とりあえず未聴の曲を計4曲(オリジナル2曲も含め)も聴けるのは倖せである。ま、全て聴いた事のある曲で、かつCD音源として持っていたとしても買っただろうけど。これを「信者」という

 しかし、何で「flow〜水の生まれた場所〜」が入ってて「YA・KU・SO・KU」が入ってないんだろう。人気からだろうか。曲的にいえば後者の方が好きなんだがなー。巷での評判は違うのだろうか。同じ理由で「See You〜小さな永遠〜」が入ってないのも不思議。残り2曲は入ってるのに。3曲の中では一番好きなんだがなー。でも「birthday eve」が入るとはね。この中ではこの曲が一番人気なのではないだろうか。牧場主は「Belvedia」。

 何だか顎の外れるようなロリ・ポップ曲がなさそう。「恋愛CHU!」とか入るだろうなと思っていたけども。バラ撒き過ぎたから?

 「王子よ〜月の裏から」がその可能性であることも否定は出来ないけど。曲名が。

0069.「アニメ/ゲーム」6/5、2002

 2つ。まずは「XUSEボーカルコレクション」。いくつかのブランドを抱えるゲーム販売会社、「XUSE」(ザウス)が販売した、PCゲームの主題歌を集めたボーカル集だ。購入動機はとにかく「Love me...」(PCゲーム「Elise」主題歌)をCD音源として所持したかったがため。ハッキリ言ってそれ以外の曲は全て知らなかったし、興味も無かった。全11曲。結論から言うと、さすがに「I’ve」と比べてはいけないが、期待値が低かったせいかそれなりに聴ける曲が多かった。曲単位では「カーニバルの夜」、「風と大地」が印象深い。

 ただしやはり「Love me...」が素晴らしかった。3分少々という少し短い物ではあるし、端的な曲構成なので飽きがきやすいのも確かだが、意外とボーカルが上手い。これ、確か記憶に間違いがなければ登場キャラの声優が歌っていたと思うのだが、なかなかどうして。あとコーラスを重ねるのは常套としても、それが単純ながらも丁寧。サビの部分が上手く生かされている。CD全体としては「なんだなんだ、90年初頭のJ−ロックか?」と思わせる古ぼけた曲があったり、1度聴いただけで2度と聴きたくなくなる曲が1つだけだがあったりと、バラついた印象を受ける。まあボーカル集という特性上仕方ないけど。あとほとんどの曲に言えるのだが、リリックもう少し力入れてください。適当すぎやしませんか。

 「「渡り鳥に宿り木を」イメージ・サントラ」。全9曲。PCゲームとして発売され、その後も各種メディア展開された「殻の中の小鳥」、そしてその続編的な「雛鳥の囀」、その2本の続編的な作品である(未発売。2002年予定か?)。2001年の同人誌即売会か何かで先行発売されたこのCDだが、とにかく一連の作品の音楽を担当されている佐野広明氏の音楽だけで、その他の要素全てを捨てても、ゲームを買う価値があると個人的に思っている。

 「雛鳥の囀」のサントラも、「殻の中の小鳥」のサントラも、「そよ風の中で」(「殻の中の小鳥」イメージ・サントラ)も素晴らしかった。ピアノとストリングスを基調としたテクノ・サウンドはその辺のゲーム・ミュージックと同じだが、ここまで自分という色を持っているゲーム・ミュージック・コンポーザーも珍しい。「Key」でいうなら麻枝准氏の音楽スタイルに似ている。作る曲似たようなものが多いのに、1つ1つが格別の破壊力を持っている

 ゴシックを思わせる荘厳な曲調なのに、どこか空虚で待ち構える崩壊を予想できる。そしてその「曲の崩壊」(曲調の急変化)を目の当たりにしたときの哀しさが非常に美味。「one word message」が一番解りやすく、一番美味。これは今年聴いた曲のベスト10に余裕ではいるのではないかと思う。惜しむらくは曲が短い事と、あの邦題か(苦笑)。前者は賛否あろう事なのでとやかくいわない。無駄に冗長で流すのならばこれでいいと思うし、逆にもっと確信犯的に曲を構築する事も可能だったのではないかという思いもある。

 後者は、これは作品群の世界観に寄与しているので(曲もそうなのだが)「ダメな人はダメ」なこのスタイルは貫かれるべきだと思う。ちなみに「one word message」は「己の言葉で語ればこそ」だ。「殻の中の小鳥」や「雛鳥の囀」ではもっと突出していて、「踵が鳴らすは石畳」、「風はなくとも鳥は飛ぶ」、「白の聖女、黒の奴隷」、「眠りのときは誰かの腕で」、「絡まる糸を紡ぎながら」などという曲名がズラリと並ぶ。

 作品が確か近世のヨーロッパが舞台で、その世界観を浸透させようという狙いだからだと思うのだが、これは、もう(苦笑)。

 曲単体、CD単体としては充分にオススメ。ゲーム?メイドさんのゲームだ(多分。未プレイなのでよく知らない)。

0068.「J−POPS」5/29、2002

 サクッと行くぞ。「Sparkle」(唐沢美帆)。「Way to Love」目当てで買ったようなものだが驚いたのが岩里祐穂氏が2曲に詩を提供している点。唐沢美帆の代表曲はその「Way to Love」であろうが、やはり詩を鑑みると岩里祐穂氏の「ライブ」や「無人の島」に好感が持てる。ただし、メロディラインは「Way〜」が一番綺麗かつ丁寧。ラブ・バラードであるので求められるのは歌唱力だが、1stとしてはこれでいいと思う。つまり、それほど上手くない。もちろん苦を呈するほどに劣悪なわけではないが、今後成長していって欲しいのは歌唱力。これに尽きる。

 その歌唱力で勝負に出た女性シンガー・ソング・ライターの1st、それが「鏡と女」(大木綾乃)。無機質な声質に聴こえたが、要所要所でウエットに富んだ歌い方をするのがクセになる。唐沢美帆は曲を提供してもらって歌っているが、大木綾乃は全曲作詞・作曲をこなす。中でもやはり「それぞれの空」が美味。もう少し、それこそ古内東子のように艶っぽい歌い方が出来れば悶絶したかもしれないメロディと詩。ただ惜しむらくはCDとしての構成が没個性である点。それぞれの曲は良い物が揃っているが、CD1枚として通して聴くと、似たような曲調の物で溢れているために特徴を捉えきれない危険性がある。声質から飛び抜けてポップな曲は似合わないと思うが、「似たような曲が多い」となってしまうのが残念だ。

 さてさて今回抜群にフィーチャリング(?)したいのが「バランソ」(つじあやの)だ。大木綾乃と同じく全曲作詞・作曲をこなすのは同じだが、つじあやのといえばウクレレ(らしい。知らなかった)。ウクレレを前面に出している点も珍しかったが(日本の歌謡曲界で)、それがまた彼女の声質と完璧に迎合している。それによってももたらされるのが不思議な浮遊感である。ジャケットを見ると「不思議ちゃん」な感じがしなくもないが、曲も不思議ちゃんである。そしてそれが心地良い。ほとんど全曲3分〜3分半と短いもので締められているが、これが5分感覚になると冗長に聴こえてしまうかもしれない危険性を考えると、微妙な物足りなさを残すのは正解だと思う。「あれ、終わっちゃった。もう1回聴きたい!」な曲が多くて(笑)。

 1曲1曲がそう凝っているようには聴こえず、また、そのせいか単調な感じがする人もいるかもしれないが、これはクセになる。それよりも好みが別れるのは牧歌的で裏表のない声質だと思うが、文句なくオススメな1枚であることに異論はない。

 女性ポップスな更新でしたが。

0067.「トランス」5/17、2002

 トランス、といっても、実にジャンル分けが(個人的に)難しい。それは単に牧場主に音楽的センス・知識が欠けているせいでもあるだろうが、明確な線引きが曖昧な点も指摘していいと思う。一般的に「トランス」という音楽ジャンルからイメージされるのは「かなり速いビートで刻まれる4つ打ちが根底にある、騒がしい喧しいけたたましくて聴覚的に頭を揺さぶられるインスト(ボーカル無し)の音楽」ではないかと思う(そうか?)。

 本来はドイツに発祥したテクノ・ミュージックの一部が由来らしいのだが、今は「Trance」(恍惚、失神状態、夢見がちな。発展して昏睡状態)という言葉通り、聴いているうちに「トランス状態」になるようなデジタル・ビート・ミュージックはほとんどトランスだと思ってもらっていいと思う。もちろんそういう音楽も牧場主は大好きだ。日本で一番有名な存在であろう「System F」(フェリー・コースティン)やミキサーとしてもDJ19などの名前が浮かぶが(今でも「Tears」(Trancentral Station)は涙モノ・・・)、それが「トランス」という音楽の全てではないことも言っておかなければならない。

 元々テクノ・ミュージックの派生ジャンルとして認知されている以上、他の「テクノ・ミュージックから派生した」音楽と共通する、あるいは近いものが大勢を占める。ハウスやブレイク・ビーツ、エレクトロニカから現在の主流はプログレ・トランスで、これはサイケデリックでありながらも大局的で繊細なトランスが流行っているらしい(トランスに限ってはあまり流行とかには興味ないのでよくは知らないのだが)。

 よく牧場主は「トランスは美しい」と言う。これを言うと聴かない人間の気分をよく害したりするのだが、トランスは、その音楽から世界観を見出せない人間が聴いても仕方ない音楽だと思う。これは特に「BT」を聴いていると思うのだが、このジャンル、想像力の無い人間は聴いても無駄だとも思う

 でも、いま「えーべっくす」が盛んに盛り上げようとしているのは違うと思う。元々「えーべっくす」が嫌いなせいもあるが(所属のアーティストが嫌いというのではないので注意)、あれは「今のうちに稼げるだけ稼いでおこう」というスタンスなのでおそらく2年もすれば市場から身を引いているだろう。それは音楽に対する冒涜だとも思うのだが、企業としてはもちろんそうあるべきなのであって強く言う資格はない。

 迫害されるのは構わない。嫌われるのも仕方ないかもしれない。

 でも、一生ついていく。世界観が拓がる感覚は、ある種最高の快楽だ。