ホーム>写経の歴史・意義


「写経の歴史」
 写経とは、いうまでもなく経典を書き写すことです。その歴史は古く、それは仏教そのものの歴史といえます。

 釈尊の滅後、その教えを後世に伝えるため、高弟を中心に一同に集い、編纂を試みました。こうして体系付けられたのが、いわゆるお経です。その後大乗仏教の発展とともに、さらに新しいお経が次々と生まれました。

 インドでは、初め多羅椰子(たらやし)という木の葉にサンスクリット語などで記され、それが中国に入って漢文に翻訳されました。こうしてお経は仏教徒たちの手によって次々に書写されて広まり、八万四千もの膨大な経典は、このように写経によって日本にも伝えられました。

 日本への仏教伝来は六世紀半ばですが、673年、天武天皇の時代に奈良の川原寺で写経が行われたという記録が「日本書記」に残っています。

 奈良時代になると、写経は国家的な事業となり、図書寮という役所まで作られています。国家安泰や五穀豊穣などを祈って、数多くの経典が有力寺院や図書寮の写経司によって書写されました。

 その後、美しい装飾で知られる「平家納経」など、寺院以外でも祈願を込める手段として写経は行われ、庶民の祈りを表すすべともなり、今日まで連綿と維持・伝承されています。


「写経の意義」
 写経は仏の教えを体得するための仏道修行でもあります。ですからかつては、写経生や僧侶は斎戒沐浴して身を清め、部屋を荘厳して写経に臨みました。

 でも、初めて写経に取り組む時は、そうした厳しい決まりに従うよりも、とにかくまずは書いてみることが大切。習字を楽しむぐらいの気持ちで、平常心で筆を取るほうが長続きします。

 とはいえ、仏の金言であるお経を書き写すのですから、一字一字を仏と思って心を込め、清らかな気持ちで取り組んで下さい。心静かに書き写していると、次第に気持ちが落ち着き、一巻書き上げた時には、何か目的を成就した様なすがすがしい気分が味わえます。

 書道の経験のある人でも、行書や草書は使わずに楷書で書いて下さい。そして、決して急がずに一文字一文字を丁寧に筆を進めてみて下さい。

 そうした気持ちで書いているうちに、心が落ち着き、ゆったりとした安らぎの時間を得ることができれば、これこそ本当の写経の功徳であるといえるでしょう。



copying of sutra

S A T O B U N K O