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般若心経と各宗派


 般若心経は、仏教の各宗派で唱えられ、日々のお勤めの中にも取り入れられています。ただし、浄土真宗では唱えません。最後の部分(「羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆呵」)が密教的な呪文になっていて、浄土真宗の宗祖・親鸞聖人がこのような祈りや密教的なものを徹底的に排されたからです。また、「法華経」を第一とする日蓮宗も、「法華経」だけで良いということで、原則として般若心経は唱えません。

 基本的には、それぞれの宗派での解釈の違いはありませんが、特に般若心経を重視しているのが真言宗や天台宗、禅宗です。それから日本的な神道と密教が習合した修験道です。修験道の修行をする行者(山伏など)さんは、祝詞ではなく般若心経を唱えながら行をしました。

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日々のお勤めの基本
「お勤め」とは仏道修行を行ずることで、正しくは「勤行」”ごんぎょう”と言います。
「勤行」は、日本仏教の各宗で、それぞれの形式が古くから確立され、僧侶によって実践されてきました。これを「日常勤行式」と言うのですが、各宗の布教活動に伴い在家の信者の「勤行」方法も指導することが必要になってきました。そこで考え出されたのが、日常勤行式をより一般化し平易にした「在家勤行式」とよばれるものです。
各宗派とも、だいたい朝夕二回勤めるとしているのが一般的ですが、内容は宗派によって異なります。しかし、多くの宗派に共通しているのは、般若心経の読経が勤行式の中に含まれていることです。
在家のために経文や所作が簡略化される中で、般若心経は、欠くことのできない重要な経典として残されています。いかに般若心経が仏教の根本と結びつき、また、在家信者とも密接な関係にあるかがうかがえます。

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宗派のいろいろ
001.天台宗   002.真言宗   003.臨済宗   004.曹洞宗   005.浄土宗

006.浄土真宗 本願寺派   007.浄土真宗 大谷派   008.日蓮宗
[001]天台宗宗派のいろいろへ戻る
●総本山   比叡山 延暦寺(えんりゃくじ)
 ・本 尊
  [寺院]薬師如来、阿弥陀如来、釈迦如来、観音菩薩、不動明王
  [在家]座釈迦、座弥陀
 ・高 祖   天台大師 
 ・宗 祖   伝教大師 最澄
 ・脇 侍   天台大師(右) 伝教大師(左)
 ・唱 名   南無阿弥陀仏
◎主な宗派と本山
 ・天台寺門宗   園城寺(おんじょうじ)
 ・天台真盛宗   西教寺(さいきょうじ)
 ・和 宗     四天王寺(してんのうじ)
 ・本山修験宗   聖護院(しょうごいん)
 ・修験道     五流尊滝院(ごりゅうそんりゅういん)
 ・聖観音宗    浅草寺(せんそうじ)
 ・金峯山修験本宗 金峯山寺(きんぶせんじ) 

 ・伊予十二薬師霊場第四番 大楽山西法寺(愛媛県松山市) ・弘冨山 清水寺(千葉県香取郡)

天台宗では勤行式のことを「勤行儀」”ごんぎょうぎ”と言い、在家信者に次のようなことを要請しています。

@懺悔文
A開経偈 かいきょうげ
B般若心経
C回向文

まずは灯明をつけ、姿勢を正して仏前に正座。合掌・礼拝してから経本を軽くいただいて開き、鈴を二つ鳴らしてから勤行を始める。
三礼、懺悔文、開経偈と進めて行く。区切りごとに鈴を一つずつ鳴らし、最後に三つ鳴らして終わる。
仏前でお参りする時に欠かせない数珠は、左手の親指と人差指の間にかけて合掌する。焼香は、線香を適当な長さに折って火口を倒して横たえ、香を親指と人差指、中指でつまみ、二回くべる。
天台宗の教えの根本経典は「法華経」である。しかし、日本天台宗を開宗した伝教大師は、「法華経」の教えには三種あるとして、そのうちの一つ、根本法華経を後世、般若心経と指定した。
勤行の中心となるお経は、朝は、「観音経」や「般若心経」夕方は「自我偈」や「円頓章」になる。勤行を全部行う余裕の無い場合は、般若心経のみ、または「観音経偈文」と般若心経を唱えること。
(天台宗総本山比叡山延暦寺)
[002]真言宗宗派のいろいろへ戻る
●本 尊
 [寺院]大日如来、阿弥陀如来、薬師如来、観音菩薩、不動明王等
 [在家]大日如来(金剛界)
 ・宗 祖   弘法大師 空海
 ・脇 侍   
  [在家] 弘法大師(右) 不動明王もしくは興教大師(左)
 ・宝 号   南無大師遍照金剛
◎宗 派   現在約50の宗派があり、最大が高野山真言宗
 ・高野山真言宗     総本山 金剛峯寺(こんごうぶじ)
 ・真言宗醍醐派     総本山 醍醐寺(だいごじ)
 ・真言宗東寺派     総本山 教王護国寺(きょうおうごこくじ)
 ・東寺真言宗          東寺(とうじ)
 ・真言宗智山派     総本山 智積院(ちしゃくいん)
 ・真言宗豊山派     総本山 長谷寺(はせでら)
 ・真言宗泉湧寺派    総本山 泉湧寺(せんにゅうじ)
 ・真言宗山階派     大本山 勧修寺(かんじゅじ)
 ・真言宗御室派     総本山 仁和寺(にんなじ)
 ・真言宗大覚寺派    大本山 大覚寺(だいかくじ)


真言宗の各派のうち、高野山真言宗を例にします。

@合掌礼拝
A懺悔文
B三帰
C三竟
D十善戒
E発菩提心 ほつぼだいしん
F三摩耶戒 さんまやかい
G開経偈
H般若心経
I本尊真言
J十三仏真言
K光明真言
L御宝号
M祈願文
N回向

真言宗の信仰生活は、供養と礼拝と言えます。仏壇はご本尊とご先祖を祀るだけではなく、家庭教育の要でもありますから、仏壇の荘厳に常に気を配らなければなりません。
勤行は、合掌と礼拝。特に真言宗は祈りの宗教ですから、三蜜行(身・口・意)がそのまま生かされる礼拝を行うことが大切です。数珠を扱う時には細かい作法がありますが、持つ時は両房を内側に、その時、記子(房の部分の珠)の珠が一つ多いほうを上にする。たたみ置く時も両房を内側にする。
焼香は、香炉に抹香を引き、その上に五種香を置く。線香の場合は三本立てる。
般若心経は、真言宗にとって大切なお経ですから在家信者の勤行の中心となります。
勤行を全て行う余裕の無い場合は、開経偈、般若心経、光明真言、大師宝号、回向を行います。
(高野山真言宗総本山金剛峯寺)
[003]臨済宗宗派のいろいろへ戻る
●本 尊
 特定の本尊をたてない。
 ・開 祖   栄西 
 ・脇 侍
 ・各派によりちがう  達磨大師(右) 各派開祖、観音菩薩(左)等   
 ・唱 名   南無釈迦無尼仏
◎主な宗派と本山
 ・妙心寺派    大本山 妙心寺(みょうしんじ)
 ・建長寺派    大本山 建長寺(けんちょうじ)
 ・円覚寺派    大本山 円覚寺(えんかくじ)
 ・南禅寺派    大本山 南禅寺(なんぜんじ)
 ・方広寺派    大本山 方広寺(ほうこうじ)
 ・永源寺派    大本山 永源寺(えいげんじ)
 ・仏通寺派    大本山 仏通寺(ぶつつうじ)
 ・東福寺派    大本山 東福寺(とうふくじ)
 ・相国寺派    大本山 相国寺(しょうこくじ)
 ・天竜寺派    大本山 天竜寺(てんりゅうじ)
 ・向嶽寺派    大本山 向嶽寺(こうがくじ)
 ・大徳寺派    大本山 大徳寺(だいとくじ)
 ・国泰寺派    大本山 国泰寺(こくたいじ)

 ・石馬寺(滋賀県神崎郡) ・石室山松禅寺(兵庫県出石郡)  

臨済宗も、天龍寺、建仁寺、南禅寺、大徳寺、相国寺、建長寺等多くの派に分かれていますが、妙心寺派の場合を例にします。

@開経偈
A般若心経
B本尊回向
C坐禅和讃
D舎利礼文
E宗門安心章

一日に一度、静座して、心をこめて勤行を行う。
まず、合掌・礼拝し、開経偈、般若心経を唱えた後に、本尊回向、坐禅和讃、舎利礼文、宗門安心章、合掌・礼拝で終わりますが、般若心経以降の順番はどうでもかまいません。
焼香をする場合は、うやうやしく香をいただいてから焼香し、合掌する。線香であれば、まっすぐに立てて、静かに合掌する。
禅宗の一つである臨済宗には、特にこれを絶対に読まなければならないという経典はありません。しかし、般若心経は最もよく読まれている経典です。
在家信者の勤行の中心となるお経は、般若心経をはじめ、「大悲咒」「開甘露門」「観音経」などがあります。
勤行をすべて行う余裕の無い場合は、般若心経を唱えるだけでも十分です。
(臨済宗妙心寺派大本山妙心寺)
[004]曹洞宗宗派のいろいろへ戻る
●大本山   永平寺   總持寺
多宝山成願寺(東京都中野区)  ・萬年山青松寺(東京都港区)

・本 尊
  [寺院]釈迦如来
  [在家]釈迦如来
 ・高 祖   承陽大師 道元(永平寺開山) 
 ・太 祖   常済大師 瑩山(総持寺開山)
 ・脇 侍   承陽大師(右)常済大師(左)
 ・唱 名   南無釈迦無尼仏


曹洞宗が定めている勤行は次のとおりです。

@開経偈
A懺悔文
B三帰礼文 さんきらいもん
C三尊礼文
D般若心経
E修証義 しゅうしょうぎ
F四弘誓願 しぐせいがん
G回向

禅宗の一つである曹洞宗は、「只管打坐」(しかんたざ)を教えの特徴としています。この言葉は、曹洞宗の開祖道元禅師の著書「正法眼蔵」(しょうぼうげんぞう)の中でしばしば使っています。曹洞宗の坐禅とは、ひたすら坐禅をすることによって自らの仏性を見出そうとするものです。
ですから、勤行を始める前にまずは仏壇の前に正座して、両手を下腹のところに組み、それから深呼吸(腹式呼吸)を二、三度して心を落ち着かせる、ということが大切です。勤行は朝と夕方に行う。
焼香する場合は、最初に香を軽く頭に押しいただいてから香炉に焚く。(続いて今度は、押しいただかずに焚く。)
曹洞宗にとって般若心経はきわめて重要な位置を占めている。在家信者の勤行の中心となるお経は、般若心経をはじめ、「観音経」「修証義」などです。
勤行を全部行う余裕の無い場合は、仏壇の前に座って、合掌・礼拝をするだけでもよい。
(曹洞宗大本山總持寺)
[005]浄土宗宗派のいろいろへ戻る
●総本山   知恩院(ちおんいん)
 ・大本山
  増上寺、金戒光明寺、清浄華院、善導寺、光明寺、善光寺大本願、知恩寺
 ・本 尊
  [寺院]阿弥陀如来
  [在家]阿弥陀如来
 ・開 祖   圓光大師 法然 
 ・脇 侍
  [寺院]観音菩薩(右)勢至菩薩(左)、善導大師(右)法然上人(左)
  [在家]善導大師(右) 法然上人(左)   
 ・唱 名   南無阿弥陀仏
◎主な宗派と本山
 ・浄土宗西山深草派    総本山 誓願寺(せいがんじ)
 ・浄土宗西山禅林寺派   総本山 禅林寺(ぜんりんじ)
 ・西山浄土宗       総本山 光明寺(こうみょうじ)


念仏によって日々の生活を送るのが一番とされていますが、多忙な中でも、せめて朝起きたら仏壇に向かって手を合わせ、回顧、回向するべきである。
経典としては「無量寿経」中の「四誓偈」が中心となります。
焼香は、一回、二回、三回とそれぞれ意味を持っていますが、心をこめて一回行うのがよい。
般若心経は、祈願の時と食作法(食事の時の作法)の時に唱えます。勤行を全部行う余裕の無い場合は、声に出して十辺の念仏「十念」を唱えます。
[006]浄土真宗本願寺派宗派のいろいろへ戻る
●本 山   本願寺(西本願寺)
 ・本 尊
  [寺院]阿弥陀如来立像
  [在家]阿弥陀如来絵像
 ・開 祖   見真大師 親鸞 
 ・脇 侍   
  [寺院]親鸞聖人(右) 蓮如上人または前住上人(左)
  [在家]親鸞聖人(右) 蓮如上人(左)または 帰命尽十方無碍光如来(十字名号・右) 南無不可思議光如来(九字名号・左)
 ・唱 名   南無阿弥陀仏
◎主な宗派と本山
 ・真宗大谷派     本願寺(東本願寺)
 ・真宗高田派     専修寺
 ・真宗興正派     興正寺
 ・真宗仏光寺派    仏光寺
 ・真宗三門徒派    専照寺 


勤行は出来るだけ毎日行う。在家信者の勤行の中心となるお経は「浄土三部経」といわれる「仏説無量寿経」「仏説観無量寿経」「仏説阿弥陀経」です。焼香は、仏前に正座して軽く頭を下げ、抹香をつまんで香炉に入れる。香は頭に押しいただかない。回数は一回でよく、その後合掌・礼拝をする。
浄土真宗は、阿弥陀如来の本願のおかげで救われていくことを勤めるので、般若心経はそぐわない。
勤行を全部行う余裕の無い場合は、仏前に座り、合掌・礼拝をすればよい。
[007]浄土真宗大谷派宗派のいろいろへ戻る
●本 山   本願寺(東本願寺)
 ・本 尊
  [寺院]阿弥陀如来立像
  [在家]阿弥陀如来絵像
 ・開 祖   見真大師 親鸞 
 ・脇 侍   
  [寺院]親鸞聖人(右) 蓮如上人または前住上人(左)
  [在家]親鸞聖人(右) 蓮如上人(左)または 帰命尽十方無碍光如来(十字名号・右) 南無不可思議光如来(九字名号・左)
 ・唱 名   南無阿弥陀仏
◎主な宗派と本山
 ・浄土真宗本願寺派  本願寺(西本願寺)
 ・真宗高田派     専修寺
 ・真宗興正派     興正寺
 ・真宗仏光寺派    仏光寺
 ・真宗三門徒派    専照寺 


できれば毎日、朝と夕方に「正信偈」の勤行を行う。在家信者の勤行の中心となるお経は、「浄土三部経」といわれる「仏説無量寿経」「仏説観無量寿経」「仏説阿弥陀経」です。焼香は、香を頭に押しいただかない。回数の決まりは特にありませんが、厳密にいえば二回つまむ。
親鸞聖人が「浄土三部経」を帰依の聖典としたため、般若心経を唱えることはありません。
勤行を全部行う余裕の無い場合は、仏前に座り、合掌・礼拝をする。
[008]日蓮宗宗派のいろいろへ戻る
●総本山   身延山 久遠寺(くおんじ)
 ・本 尊
  [寺院]釈迦無尼仏   三宝尊 大曼陀羅
  [在家]大曼陀羅もしくは三宝尊 前に宗祖像 
 ・宗 祖   立正大師 日蓮
 ・脇 侍   
  [寺院]四菩薩、四天王、文殊・普賢菩薩、不動明王、愛染明王
  [在家]鬼子母神(右) 大黒天(左)
 ・唱 名   南無妙法蓮華経
◎主な宗派と本山
 ・顕本法華宗    大本山 妙満寺(みょうまんじ)
 ・法華宗(本門流) 大本山 光長寺・鷲山寺・本興寺・本能寺
 ・法華宗(陣門流) 総本山 本成寺(ほんしょうじ)
 ・法華宗(真門流) 大本山 本隆寺(ほんりゅうじ)
 ・日蓮本宗     本山  要法寺(ようほうじ)
 ・日蓮講門宗    本山  本覚寺(ほんがくじ)


勤行は毎日続けて行うことを心がける。経文は仏のことばであり魂であるから、誤った読み方をしないよう、朝の勤行にはできれば経本を用意する。
読誦する基本的な経文は、勧請、開経偈、妙法蓮華経方便品第二、同如来寿量品第十六、ご妙判、お題目、宝塔偈、回向、誓願の順
焼香の回数は三回ないし一回、線香は一本ないし三本となっています。
日蓮宗では、「妙法蓮華経」を所依の経典としているため、般若心経など他のお経を唱えることはありません。


copying of sutra

S A T O B U N K O