音楽のお小言


第220回2月14日(木)
微笑みだけを返して欲しい。言葉なんていらない。心だって、いらないから。

素晴らしい。もしかして10か月ぶりじゃないのか。意味わからん。

今回はこちら。

「さよならメモリーズ」(supercell)。

今の日本のポップスを大きく、おおざっぱに「作詞」、「作曲」、「編曲」、「歌」、「演奏」と分けた場合、
個人的に作曲が6、編曲が3、作詞が1、という割合で評価をする。ある程度以上であれば演奏のレベルは正直わからないし、
そして「歌い手」に関しては一切興味がない。誰であっても「その人が歌ってるから」という理由で音楽を買うことはない。歌い手、パフォーマー、つまり「名義」という部分。

もちろん異常に下手な歌い手だったりすると別だが、今はそんなの探さないといないし、
「上手くないことに意味や味がある」こともある以上、歌ってる人に関しては興味がない。それはもう、自分でも奇異と思うほどに。

だからこの曲も、誰が歌ってるかとかはどうでもいい。
買った理由は「supercell」だから。かの音楽を知ったのはつい最近だが、名前くらいはずっと聞いていた。
「噂になって売れてるみたいだけど、さてはて?」と訝しんでいたのが正直なところ。しかし当たり前の話だが魅力がなければ売れもせずに話題になったりしないのも事実。

はじめて「ワールドイズマイン」(supercell feat.初音ミク)を聴いた時は結構ショックだった。
「ああ、なるほど。こりゃ売れるわ」と単純に納得した。そしてそれ以上にリリック、作詞に印象を残させたのがショックというか衝撃だった。

作詞については、今の溢れる音楽で、正直、首をかしげるものしかない、と感じている。
本当に誰にでもできるレベルになっている。それを悪いとは言わない。自然な流れだろう。高度なリリックでも聴く人間が劣っているならそれは意味をなさない。

ryoの詩は、作為的でも我を通すから印象に残すのだろう。
「ワールドイズマイン」なんてあまりにも恥ずかしくて、でも初音ミクが歌うからこそ、今の評価があるのだと思う。

「さよならメモリーズ」は特にタイアップを持たない作品。
「卒業ソングの決定版」、とあるように、切なくも前向きなメロディラインで、安心して聴けるレベル。
「君の知らない物語」(supercell)も良い楽曲だったが、負けず劣らず、非タイアップで耳にする機会はなくてもファンなら「買わなきゃよかった」と思う人は少ないだろう。

相変わらず歌詞も秀逸だが、結局のところラブソングなのが少し残念。
でもまあ、考えてみれば学生時代に恋をしなかった人よりもした人の方が圧倒的に多いだろうから訴求力は段違いか。

この曲が卒業ソングの定番になるかどうかは置いといて、その質に耐えるだけの楽曲であることに異論はない。

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第219回4月16日(木)
一つだけしかない名前で、私を呼んで欲しいの。まだ誰も知らない、世界の何処かで眠ってる。

「東のエデン」の主題歌がoasis、というのは知ってはいた。
はじめて知った時は「?」となりもしたが、なるほど、出来上がった第1話をテレビで見ていて、納得した。

今回は、ここ数カ月で聴いた作品を簡潔に述べていきたい。
ちゃんとした感想なんかは要望があればお応えしたい。今でも数件溜まってるが、あまり気にしないことにする(
サイテーですね)。

・I’veのCD−BOX

前回サラッと書いたことで以上。
詩月カオリと川田まみの2曲が抜きん出ている。MELLの曲は意外な感じ。
ただ、やはりいかんせん高い。ファンなら楽曲だけで必携と言えるが、残念ながら知らない人には120%オススメできない。もっとお金の使い道は、きっとある。

・ユアウエア(IKU)

厳密に言うと、I’veの作品ではない。
ないが、それは別にどうでもいいことなのでとりあえず買った。とりあえず聴いた。
いい声をしているし、I’veのボーカリスト5人のちょうど中間というか、全部足して5で割ったような印象。シンガー・ソングライターという点でも少し毛色が異なる。

彼女の、ボーカリストとしてなら悪いアルバムではないが、シンガー・ソングライターとしての作品とするなら、なんとも思わない作品。

・The Front Line Covers(I’ve)

I’veばっかだな・・・。
主に「regret」から「disintegration」までのコンピから、
ボーカリストを入れ替えてのリアレンジ。選曲は権利関係の問題で難を極めただろうが、結果的に良い方に出た。

温故知新、という言葉を思い出す。テクノ系の音楽によくある古臭さがこれだけ時を経ても感じない。
それぞれに個性が出た楽曲群はさすがに10周年なだけのことがある。息が合ってるというか、プロデュース陣がしっかりと歌い手の特色を把握している。

・プレパレード(逢坂大河など)

ずっと気になっていて、確か何かのついでに買ったマキシ。
これだけのピコピコ音楽を面白楽しく仕上げたプロデュース陣に拍手。こりゃ苦笑を通り越してよくできてるわ。
アニメ自体は途中まで見ていて普通に見るのをやめたが、この曲だけはもっと注目されていいと思う。歌い手が3人でも300人でも関係なしで、無視、放置なこの姿勢はかえって潔いと感じる。

おそらくテクノ聴きでなければ感性に引っかからないと思うが、これは知っていれば昨年のベストいくつかに入れた。それくらいテクノ聴きにはたまらないギミック満載。

ただし、ボーカルの意味は本当にほぼ100%ない。そこはJ−POP聴きには割り切りが必要。

・Everlasting Songs(Fiction Junction)

非常に高い位置、レベルでまとまっている良作。
ただ、まとまりすぎていて後には何も残らない。「普通にいいアルバムだった」で終わってしまう。
どこに文句をつけていいのかわからないほどに洗練された楽曲がズラリと並ぶが、それだけに途中で疲れてくる。あとボーカリストの区別ができない。2〜3人でいい気もする。

なんとなく、ステイゴールドやナイスネイチャがどういう経歴だったかを印象では覚えているが、細かな戦績はほとんど思い出せない感じに似ている。

・white pulsation(ELISA)

音楽プレイヤーに入れた順番になってるから、この辺になると自分でもずいぶん古い感じはする。

元々アルバム出したら買おうと思っていて、
聴きたかったのは実は「ef」の2曲ではなく、「隠の王」の「HIKARI」だったりする。
suaraにも思うんだが、ツボは狭いがハマった時の破壊力は非常に大きいボーカリスト。「ef」の曲よりもやはりこの「HIKARI」なんかで深くそう感じる。

ただ、その”振れ幅”自体がなければ凡庸になってしまうわけで、必然的に陽のための陰が必要になる、という牧場主の考え方はおそらく、詰られるべきものなのだろう。

全曲の中でもお気に入りは「ミカエルは眠る〜dans le coeur〜」。誰が歌うよりもELISAが歌ってこそ、という1曲。

・Distance(ROUNDTABLE feat.NINO)

アニメ業界ではすっかりお馴染みになった名ユニット。
ここで言うのが妥当かどうかわからないが、NINOを介さない2人のアルバムも美味なので1度お試しあれ。

全体的なスタイリッシュさに、「もっと!」という直前で抑えるお代官様音楽は相変わらず。
良い意味で淡泊というか、アッサリしてお上品な感じは楽曲の質の割りに絶対的な数でファンが増えない要因なんだろうと思う。ただ、それは個性とも言う。

「ナガレボシ」なんかはすごく良い曲だと思うんだけど・・・。
でもまあ、変に個性崩してファンを増やすよりも、あんま売れなくていいからこのままで、と思ってしまう。
ちなみに「夜桜四重奏」は主題歌2曲、劇中音楽と合わせた音楽要素において、昨年ではマクロスFかこれか、というくらいによく出来ていた。さすがFlyingDOG、いいお仕事。

 

お題、ご要望お待ちしております。ただし、褒めて終わり、はできません。

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第218回4月7日(火)
つないだ手が暖かいから、まだまっすぐ歩いて行けると決められるんだ。

こないだ、3月の下旬に出たI’veのCD−BOX。
KOTOKO、川田まみ、MELL、島みやえい子、詩月カオリのそれぞれの新シングル、
そしてI’veをフィーチャーした映画そのものが入ってお値段1万円。もっとI’veの全楽曲集みたいなものだと思っていたら映画がメインのような商品だった。

映画はおそらく見ないので結構割高な買い物だったが、信者なので文句は言っても特に後悔などはない。

というよりも新曲の5曲のそれぞれが良質な楽曲でこりゃシングル・カットしないならもったいないくらいの出来。

特に川田まみの「L’Oiseau blue」と詩月カオリの「end of refrain〜小さな始まり〜」がお気に入り。

前者はC.G.mixの楽曲らしい親しみやすさ、
後者はボーカリストの個性を確実に活かした構成が素晴らしく、予想以上の満足度。
5人のボーカリストとしてはこの2人が好きなので、特に詩月カオリはそろそろ1stアルバムの話があっていいと思うんだけど、今年中にはなんとか・・・。

あ、あとそれぞれにインタビューしたブックレットも面白かった。

ちゃんと聴き込んだらまた違った感想も書けるかな、と思う。

正直、どう良く書いても、ファンが買うにしても高い商品。
映画はいらないから、5曲で半額とは言わないから、アルバム2枚分くらいの価格で、とは思ってしまう。

でも楽曲は繰り返すが満足。

今年I’veがどういう活動をしていくのか注目していきたいと思う。

ちなみに今度KOTOKOがI’ve外で新曲を出すけど、買わないだろうなぁ。

個人的に、I’veを構成する要素に「ボーカリスト」は入ってないから。

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第217回2月25日(水)
取り留めのないものだからこそ、大事に想いたいんだよ。せめて、僕くらいは。

更新頻度を上げたいと意気込んで、1ヶ月以上ぶりの更新。
まあ前回が3カ月ぶりくらいの更新だったことを思えば更新頻度は上がっているのか。すごい根拠だな!

毎回「今回何書くんだっけ?」と思いだすために前回の末尾を参照する姿が情けない。

まあいいや(ケロリ)。

今回は「時を刻む唄」(Lia)。

TVアニメ「CLANNAD After Story」のOP曲。
作詞・作曲が麻枝准、編曲がANANT−GARDE EYESでボーカルは毎度おなじみLia。
しかしこの編曲って誰、というか何なんだろうと思ったらあの「doll」(Lia)のアレンジも同じクレジットだった。「doll」は何回か前に書いたと思うのでそちらをどうぞ。

ちゃんと調べてないので間違ってたら申し訳ないが、
おそらく麻枝准がこのアニメ第2期のために書き下ろしたのであろうオリジナル楽曲。
アニメの「CLANNAD」はすごく良い出来だが、どうしても「小さなてのひら」(riya)の印象が拭えないので主題歌が印象に残らない。

余談だがこないだチラッと見たら主人公の祖母が出てくるシーンで、それだけで泣きそうになった。

牧場主にとって「CLANNAD」は鬼門だ。

ちなみに「AIR」は禁忌だが

で、「時を刻む唄」。

語弊を覚悟で言うなら、繰り返しになるがそれほど印象に残ってくれなかった。
楽曲としては決して悪いものではないし、ちゃんと興味も持てたのでCDも買ったが、何度聴いても特別な感想を持てない。
個人的に「CLANNAD」にはもっと落ち着いた、深みを隠さない楽曲が合うと思っていたためにショックだったのかもしれない。例えて言うなら立派な鍵でも鍵穴に合っていないというか・・・。

EDの「TORCH」(Lia)もそうだが、なんというか「CLANNAD」らしくない、と思えてしまう。

第1期はOPがゲームのリアレンジなので違和感なく入っていけた。
EDに至っては牧場主が「アニメの楽曲で何本かの指に入るほどに卑怯」と天を仰いだ楽曲なので、どうしてもそれと比べてしまう。

うーん。聴き込みが足りないんだろうか。
そういえば麻枝准の楽曲にしてはそれほどキャッチーでもないし、様式美という感じもしない。
ファンの多い人でもあるし、個人的にもこの楽曲に関して悪い印象はまったくないのだが、なんていうんだろう、毒にも薬にもならないというか、いや、これでは酷評になるのか・・・。

楽曲、というよりもアニメ作品の印象が強くなってしまう。わかっていても。

それほどにアニメの出来や評判が好評ということでもあるんだけどね。

次回は・・・。

要望があればもちろん優先だけど、なければ「white pulsation」(ELISA)、あとは最近書いてないような気がするI’ve系などかな。

そういやI’veは3月にCD−BOXが出るんだよね。年末のコミケで出たCDも同じ時期に。

楽しみだなー。

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第216回1月2日(金)
ようやく認めることができるのだと思う。たとえそれが餞であっても。

今回は、本当はマクロスの話なのだけど、
2009年最初の更新ということで、2008年に印象に残った楽曲ベストいくつかをやりたい。
とはいってもイチ時期に比べて音楽は本当に聴かなくなったし、そしてそれを残念とか後悔とか、そういう気持ちがない自分に驚き、納得している。特にこれは去年から、というわけではないが。

簡単に言えば音楽好きでなくなったんだろうと思う。

ベストいくつか、といってもアニメ/ゲームの曲中心で、マクロスの話もするのでそれでご勘弁。

正直、2008年のアニメ音楽は「マクロスFか、それ以外か」というすごい状況だったように思う。
セールス的にもそうだし、個人的には菅野よう子の復権を見れて幸せだった。ここ数年の彼女は何だったのだろうとすら思う。それを踏まえて、個人的ベスト5。

 

ダイアモンド クレバス」(シェリル・ノーム starring May’n)。

作詞hal、作・編曲菅野よう子。TVアニメ「マクロス・フロンティア」EDテーマ。
圧倒的な質量、ゆるやかに流れていく情緒。力強く、儚く、すべての形容詞を内包する、まさに「菅野よう子の楽曲」。
作詞、作曲、編曲、歌唱、演奏のどの要素においても非常に高い完成度を示し、アートという面においてもはや敷居が高いとすら思える異常な曲。頭痛がするほど脅威に感じた楽曲だった。

普段作詞に関して高い評価をすることは滅多にないんだが、この曲は素晴らしい。
歌い手も抜群に美味いためにおおよそこれ以上を求めるのは酷だと思える。それを良い意味で裏切り続けたのがマクロスFの音楽だった。

特に何か変わった仕掛けがあるわけではない。
ただしっかりと「歌い尽くす」という表現がぴったりの、2008年の日本を代表するとすら思う「アート」。
寸分のスキもなく、見上げるだけ。相性というものもあるんだろうが、この曲に出会えて幸せだった。ミルフィーユのように幾重にも重ねられた構成が心地よく、感性を刺激する。

「ポップでなければ作り手の自己満足」、と思っている牧場主にとって、
カラオケで一般人が歌うことに対してそう難しくないポップさ、取りつきやすさは作り手側のプロ意識の高さを感じる。

マクロス自身、ほとんど見なかったが、なるほど、人気があるのも頷ける。この楽曲だけで。

 

portamento」(川田まみ)。

作詞川田まみ、作曲中沢伴行、編曲中沢伴行、尾崎武士。
川田まみの2ndアルバム「SAVIA」に収録された、ラスト・トラックにしてメッセジング・ナンバー。
音楽制作集団I’veの作品らしく、ソツなく、それでいて全体的に質の高いアルバムではあったが、やはりあった「シングル・カットされない爆弾級の1曲」。

「UZU−MAKI」(KOTOKO)にしろ「SEED」(川田まみ)にしろ、
アルバム中1曲だけ場違いに図抜けた曲があるが、この「SAVIA」に関しては「portamento」だったということ。
語弊はあるかもしれないが、良い意味で遊びながら作っている、楽しんで作っているんだろうなと思う。言ってはなんだがI’veに関してはボーカリストは飾りに近いと思っている。

飾りとはいえ、川田まみの歌唱は個人的にとても好きで、
好みがわかれるだろうが、あの節回し、ビブラートの使い方は武器であり、強みであり、個性だ。
その個性を踏んだ上で楽曲を作るのだから相性が悪いわけがない。川田まみのメイン・プロデューサーともいえる中沢伴行の面目躍如、彼女には彼の楽曲が最も合っている。

高瀬一矢が「嫉妬すら覚えた」と表現した、これぞ「ザ・中沢ワールド」。
整合性が高く、言うなれば様式美。高瀬一矢のようなギミックは少ないものの、その分逆に毒もなく、洗練されている。
シングル・カットには必須である故意的な盛り上げ、演出が必要ないため、非常にまとまりがいい。作り手と歌い手が満足して作り上げた印象を受ける。文句なく良質の曲である。

もっとも、詩には魅力を感じないが、それはご愛敬というところか。
終盤で曲を置いてけぼりにして伸びやかに歌い切る川田まみの歌唱に、詩は期待していない。ボーカリストなのだから。

タイアップが少なかったためかセールス的には普通だったが、もっと評価されてしかるべき内容であり、ボーカリストだ。

 

ノーザンクロス」(シェリル・ノーム starring May'n)

作詞岩里祐穂、ガブリエラ・ロビン、作・編曲菅野よう子。
「ダイアモンド クレバス」と同じくマクロスFのED曲。開いた口が塞がらず、腰が抜けるほどの衝撃。
すごい、という表現すら生ぬるい。「ダイアモンド クレバス」とは対照的な、攻撃的で感情をストレートにぶつけてくる構成、歌唱に、恐れと戦きを隠せず、身震いがした。

これは珍しく、というか他に思い当たらないが、
「歌い手が菅野よう子の楽曲を喰ってしまっている」、稀有な曲。対等に渡り合ってるのがすごい。
2人がそれぞれを認め合って、それがとことん昇華し尽くした、おそらくパーフェクトな楽曲。あの岩里祐穂の詩が、非常に精度の高いものであるのに、翳む霞む。無茶苦茶な楽曲だ。

イントロから焦燥感を掻き立てられ、感情がざわつく。
たかだか5分ほどに、全エネルギーを凝縮させ、発散することを強要する。歌い手泣かせの曲だ。
2枚組のボーカルアルバム、「
マクロスF ボーカルコレクションアルバム〜娘たま♀〜」でのMay’nをはじめとした3人のコメントが印象深い。興味ある方はぜひ手に取るといいだろう。

ものすごいボーカリストだな、とつくづく思う。普段歌い手でCDを買うことはほとんどないが、これはそうさせるかもしれない。

 

DISCOTHEQUE」(水樹奈々)。

作詞園田凌士、作・編曲上松範康。TVアニメ「ロザリオとバンパイア CAPU2」OP曲。
自分でも意外だが、はじめて耳にして以来頭から全然離れず、何の曲か調べてわざわざマキシを買った。今でも意外でならない。
テレビアニメの主題歌、というのは買う時に知ったくらいで、アニメもその縁で数回見たが、今はああいうOP映像が流行っているのだなぁ、と感慨深く思ったのを覚えている。「かんなぎ」とか。

水樹奈々に関しては1stから何枚かアルバムを買ったくらいで、
今思うとデビュー当時から知っているが、相変わらずの人気ぶり、むしろ着実に支持層を伸ばしているようだ。
ただ、この曲に関しては、文句というほどでもないが少し前に出すぎているな、と思う。商品としてはもちろんそうあるべきなのだろうが、歌い手ではなく曲に惚れた人間としては残念だ。

何といっても開き直ったディスコティークが素晴らしい。
完璧という表現は「これ以上いじりようがない作品」に対して使うが、この曲は完璧、パーフェクトだろう。
ここまで開き直られると苦笑するほかない。純粋に作り手のセンスを評価したいし、こういうノリの曲も新鮮でたまらない。そう、もうここまでくると本当に「センス」以外の形容が難しいくらいだ。

単調なのに凝った構成で、何より大切にしたかったであろうリズム感が極限まで活かされているのが面白い。
前述したポップでないなら意味がない、という私的な観点だけでいうなら、2008年で最も輝くべきはこの曲か、後述する曲の2曲が図抜けていたように思う。

上松範康についてはまた改めて取りあげたい。「喰霊−零−」などもあるので。

 

星間飛行」(ランカ・リー starring 中島愛)

作詞松本隆、作・編曲菅野よう子。マクロスF挿入歌。
「ノーザンクロス」とは真逆の意味で驚愕し、腰が抜けそうになった曲。2008年はこの曲だったと思う。
これもパーフェクト。どこにもケチをつけられない。作り手が、普段は障害になる様々な諸問題を逆手に取り、「これでどうだ!」と世間に突きつけた、本当に稀有な曲。ここ10年単位でもいい。

本編を見ていなかったのでサビ直前の「キラッ☆」に気づいたのはずいぶん後になってからだが、
本当に楽しんでいるな、プロフェッショナルだな、と改めて凄味を感じたと同時に、やはり恐さも覚えた。やはり菅野よう子は菅野よう子だな、と。
色々とコメントしたい曲ではあるが、もう純粋に曲を楽しむだけで、この曲に関してはそれだけでいいのだろうと思う。もはや何を言っても蛇足になる。これこそアートであり、お金を出して買うべき商品である。

大げさかもしれないが、この曲に出会えて「音楽っていいもんなんだなぁ」と思えた。
ここ何年もそんなこと思いすらしなかったのに、その昔に抱いていた感情を、たとえ少しでも喚起させたこの曲が、個人的にNo.1とすることに迷いすらしなかった。

中島愛のボーカルも、抜群にうまいわけでは決してないが、何かを持っている。
華というかスター性というか、甲斐甲斐しく菅野よう子の曲を歌い続け、歌い切るその姿に凡人が持たない特別なセンスがあるのだろう。

松本隆という作詞界の超がつく大御所、そして音の魔王菅野よう子に挟まれて、よく歌い切ったと思う。
本人が「娘たま」の中で「奇跡の曲」としていたが、なるほど、普段奇跡という言葉を嫌悪する牧場主でも、それ以外の言葉で形容できる曲ではないと納得する。

今回5曲を選ぶ中で、真っ先にこの曲を選んで、残りを選別した。

そう書くだけで説得力があるかもしれない。

 

振りかえると様々な曲と出会えた1年だった。
数は昔に比べると雲泥の差だが、それでもそこそこ音楽に興味は持てているようだ。

1年後も、もし機会があれば振り返ってみたい。
競馬などに比べると熱意の点で難しいかもしれないが、要望があればちゃんと応えたいと思う。

5曲には選ばなかったが、他には「旅の途中」(清浦夏実)や「やさしい」(茶太)、「doll」(多田葵)、
「時を超えて」(Roundtable feat.NINO)、「Dark Side of the Light」(飛蘭)、「Virgin’s high!」(MELL)なども印象に残った。

今年はもう少し更新頻度を上げていきたい。毎回言ってる気がするが。

とりあえず次回は要望があったので「時を刻む唄」(Lia)で。
あと自分用にメモとして、「百合ームコロッケ」(V.A)や「ラグナロクオンライン2 O.S.T.」(菅野よう子)を。

あと余裕があれば「Distance」(Roundtable feat.NINO)を。

それでは皆様、今年もよろしくお願いします。

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第215回9月4日(木)
なぜなら、あなたがあなたを責めるからだ。そんなことは求めていない。私が求めるのは贖罪ではなく、断罪だ。

色々と題材があって迷うんだが、要望も含めて今回は「RIOT GIRL」(平野綾)。

人気声優の1stアルバム。
意外に思われるかもしれないが、牧場主はそこそこ期待して買った。
というのも本人よりも、人気なだけにお金をかけたであろうクリエイター陣に期待して買った。下手な作品には仕上げないであろう、と。

の割りに凡庸な作品だな、というのが第一印象。

なんというか、普通。普通というか、「・・・それで?」という感じ。

決して批判しているのではないのだが、「?」という印象が残るのだ。

歌が上手いかと問われれば、曲によってバラつきはあるが、そう悪くないと思う。
聞いていて苦痛と思える歌い手も多い中(
別にアニメ関係だけに限った話ではない)、彼女の声や歌い方は、なるほど、評価する人も多いのだろうな、とは思える。

個人的な嗜好の話になると好きではないし好きになれる歌い手ではないが、それはまた別の話。

改めて一通り聴いてみたが、曲もそう悪くはないと思う。
バラエティに富んでいるし、シングル・カット曲も何曲もあることから捨て曲が多いという感じもしない。

なのになぜ「凡庸」と映るのか。

この結論を得るのに時間がかかって、今回の更新の遅れにもなった。

うそです、ごめん。それは言い訳。

無難、それが結論。

可もなく不可もなく、も含めてファンの多くは満足したと思う。
しかし特徴がない。「このアルバムのコンセプトは、これです!」というメッセージングもない。ただの1st。

おそらく作曲陣が多いために統一性もないんだろうと思う。
コンビニの幕の内弁当のような、雑多でまとまりのない作品と捉えてしまう。幕の内弁当好きだけど。

じゃあどうすればよかったのか、という問いかけには解を持たない。
牧場主は音楽で飯を食べているわけでもなく、これは論評などではないただの感想に過ぎないからだ。

個人的に「NEOPHILIA」とそのc/wだった「forget me nots・・・」のマキシ1枚だけでいいんじゃないかと思える。
ちなみに「forget〜」だけは歌が上手いと思える。なんで曲によってこれほどバラつくんだろうと思えるほど歌唱が悪い意味で富んでいるが、この曲のときだけは文句なく歌が上手い、と思える。

おそらくいつか出るであろう2ndは買わない。今後も歌い続けるのだろうが、少し残念。

好きな作曲家がプロデュースするなら別だが、それはもう平野綾本人とはまったく別の話になるし。

今後のお題候補は以下です。基本的に要望を優先します。

・「SAVIA」(川田まみ)

・「ひかりなでしこ」(島みやえい子)

・「MELLSCOPE」(MELL)

・「Angel Feather Voice」(黒石ひとみ)

・「ちゃたのわ」(茶太)

・マクロスF関連のCD

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第214回6月22日(日)
ありがとう、なんて言ってあげない。さようなら、なんて、言えないから。

もちろん今回のお題は「娘フロ。」(菅野よう子)なのです。
商品名からは皆目見当もつかないかもしれないが、TVアニメ「マクロス・フロンティア」のサウンドトラック1弾目。

まず結論から。

「菅野よう子”信者”に戻れる作品」、とだけ。

果たしてこの作品以上に買うべき作品があるのかどうかを問いたい。
これはアニメ・ゲーム系に限ったことではない。ただそこにある”音”に価値を見出すなら、この作品は”アート”である。

これでは他の「サウンドトラック」と名のつく商品が哀れですらある。

この作品で3千円なら、他のサントラで3千円程度の価格の商品はもはや”詐欺”ですらあると思える。

正直、ここ2〜3年の菅野よう子の作品には失望していた。
失望どころか、CDを買わず、聴きもせず、「もう彼女は終わってしまったのか」と勝手に落胆していた。

もはや信者ではない。ただのファンなのだと自らを言い聞かせていた時に、この作品。

ずるい。

「良い作品である」という感想は必要ないだろう。
所詮は感受性の世界、受け取る人間の感性によるところですべての評価が収斂されるからだ。

それでも、だ。

もう1度記そう。

この作品以上に”人類が共有する統一された価値である金銭を出してまで”手に入れる”アート”があるのかどうかを疑問に思う。

大袈裟だと思うだろう。

そう思っていただけるように書いている。

だが、この作品を手に取り、聴き、そしてそのうえでもう1度、読み直して欲しい。

決して大袈裟ではないはずだ。

当たり前だ、書いてる当人がそう感じているのだから。

なんというか、まあ、ため息しか出ない恐ろしい作品である。

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第213回5月6日(火)
だって、そう告げたんだもの。私の、これまでの人生が。あなたと紡いだ糸で出来た繭が。

今回のお題は「ダイアモンド・クレバス/射手座☆午後九時Don't be late」(シェリル・ノーム starring May'n)。

ご存じ「マクロス・フロンティア」のED曲&イメージ・ソング。
作・編曲はアニメの音楽も手掛ける菅野よう子。今年の音楽界で最もお買い得といっていい千円とちょっと。

同じ菅野よう子でも坂本真綾のOPは食指を惹かれなかったが、このマキシは別。

2つの曲とも圧巻。コスト・パフォーマンスを考えるとこれ以上の作品は少なくとも今年はないと思う。

「持ってっけ〜♪」のメッセージングでわかるであろうところが、企画・マーケティングの勝利。
最近の菅野よう子は、ここでも取り上げることがなかったように、ほとんど興味がなかった。もう終わったのか、あのエネルギッシュでアヴァンギャルドな才気はどこへ、という思いだった。

しかしこの「マクロス・フロンティア」ではその魅力を如何なく発揮しているように思う。
ああ、ちゃんとお金と時間もらって取り組んでいるな、と思うのだ。ここ数年の作品はスルー、という方も多いだろうが、この作品のCDだけは自信を持ってオススメしたい。

しかしまあ、この歌い手も全然知らないが、さすがに菅野よう子の楽曲に挑むだけあってなかなかの人物。

この「普通に上手い」、というボーカリストが昨今のチャートを眺めてもほとんどいないのを嘆くべきか。
まじめな話、別に歌が下手でも曲がゴミでもかまわない。音楽は芸術の畑であり、その各人の感受性に帰結することを思うと、価値の是非を論じるのは愚かだ。

しかし、その昨今のチャートを眺めてみて、この1枚のCD以上に手に取られるべきCDがあるのかどうかを疑問に思うのも本音。

サントラは今からとてもとても楽しみにしている。

アニメは2話までしかまだ見ていないが、買わない理由がどこにもない。久しぶりに諸手をあげて菅野よう子信者に戻れる作品だ。

圧巻。

この作品を一言で表すなら、個人的にはこう。

ちゃんとした感想は、また機会があれば。

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第212回3月11日(火)
まるで鏡のような人生だね。

今回のお題は3つ。「doll」(Lia)と「メグメル〜cuckool mix 2007〜」(eufonius)と「だんご大家族」(茶太)。

「doll」は麻枝准の作詞・作曲による、TVアニメ「GUNSLINGER GIRL‐IL TEATRINO‐」のED曲。

最近になって少し誤解は解けたが、それでも今でもこの作品は「女の子キャラ満開の大きなおともだち向け作品」じゃないかと思っている。
まあおそらく誤解だろうし、気を悪くされる方もいるだろうが、どうしてもメディアワークスということでそんな印象がある。ちなみにここの作品はほとんど手を出さないことにしている。

アニメも一生見ることはないだろうが、EDテーマが麻枝准、ということで買ってみた。
ちなみにOP曲はKOKIA。知らなかったわけではないし、今でも少し気になってるのでもしかすると買うかもしれない。

やはり、というか相変わらずの麻枝節。
固執したのは様式美、発注に対しての回答ではなく、そもそも彼の楽曲は全部こんなの。
「doll」にしても個人的には「
BirthdaySong,Requiem」(Lia)じゃない?とすら思えた。というか、これは今でも思ってはいるが。個性に芯があるというか、良くも悪くも「麻枝准」なんだな。

のだが、やっぱいいわ。男の空想的なロマンティシズムがたっぷり詰まった1曲。
後述する「だんご大家族」でもそうだが、淡々としているのに引き込んでくる。いや、平板であるがゆえに、より一層製作者の芯を感じさせる、とでも言うのか。

思わず苦笑してしまうほどの独り善がり感ではあるんだが、そう、そんな麻枝准の楽曲がやはり好きなんだなぁ。

ちなみにCDにはLiaボーカルと多田葵ボーカルの2つが収録されている。
どちらにも個性があり、好みの問題と断じればそれまでだが、どちらがどちらの興を殺ぐものでもないため、あまり気にする必要はないだろう。

そしてTVアニメ「CLANNAD」のOP曲、「メグメル〜cuckool mix 2007〜」。

あまりにもアニメのOPの出来が良すぎるためか、曲の影が薄い薄い。
この「CLANNAD」は元々年齢制限のないPCゲームで、そのOPがこの曲の原曲、「メグメル」だった。

その2つの曲を比べてどうか、という話になると思うが、結論から言ってほとんど変わらない。
というよりはむしろ最初にリミックスの方を聞いた時は「え、ほとんど変わってないよ。これでお金取ったらダメなんじゃないの?」とすら思った。

じっくり聴くと様々なアレンジを堪能できるんだが、
それこそ「お、ここが変わってる!」という印象を持たせるに至らないために凡庸なアレンジと捉えられてしまう。
むしろ「大きな期待を持たれているテレビアニメ版のためのリアレンジなため、徹底して丁寧に、慎重に、ただし骨格は絶対にいじらないアレンジであったためのこの結果」と受け止めるのが正解か。

ただ、それこそ本当にこの曲を核として商品としたならば、文句を言うファンも多かったのではないか。

そしてそれをさせなかったのがc/wである「だんご大家族」の存在。

個人的に、テレビ版のEDでこれが流れたとき、腰を抜かすほど驚いたと同時に、怒りすら覚えた。

「CLANNAD」をたった1曲で表せる曲、「渚」。
手がけた麻枝准が、「「Kanon」の頃から温めていたメロディ」と表現したほどの、メロディ。
そしてゲーム版のEDでその曲をボーカライズした「小さなてのひら」(riya)により、ディスプレイ前でナイアガラよりも膨大な量の涙で轟沈した者も多いだろう。

正直、ゲーム版の終盤は泣きすぎて死ぬかと思った。

そんな曲があるのに、同じメロディで違ったボーカル曲。しかもあの詩、あのボーカリスト。

くそ、なんて商売上手なんだ・・・。

OPではなく、このED曲のためにマキシ・シングルを買った人間は、95%〜100%くらいの割合だろう。

正直に言うと、今でも納得のいかないところがある。
それほどにゲーム版での「小さなてのひら」は衝撃的であったし、「key」系のボーカル曲では群を抜いて1番好きな曲。

アニメ版EDも良く出来ているため、余計に違和感というかジリジリとした奇妙な感情が生まれる。

しかしこの茶太という人も強烈な個性があるな。
TVアニメ「こどものじかん」の中盤に1回だけ100%シリアスだった回があって、
その話限りのED曲だった「やさしい」(茶太)がものすごいツボだった。それこそ作品を見る目をかなり変えさせられた曲だった。

いやまあ、あれは演出の勝利か。曲そのものはそれほど「!」というものではないのかもしれない。前提や先入観というのは扱いが難しいものだ。

とはいえ、「doll」にしろ「だんご大家族」にしろ、麻枝准というコンポーザーの色がよく表わされているとは思う。

彼の独特の、本当に様式美としか表現のしようのない感性を受け入れられるかどうか、当たり前の話だが結局そこに尽きる。

ちなみに「作詞・作曲麻枝准×編曲たくまる」、というのはかなりツボだ。「ソララド」(riya)とか素晴らしい作品だった。

次回のお題は未定。もしかすると「狼と香辛料O.S.T.」(吉野裕司)、かな。

あ、いやたぶん「SAVIA」(川田まみ)だ。

一応お題も募集しております。

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第211回2月14日(木)
善い人にはなれない。人であるがゆえに。

今回のお題は2つ。まずは「旅の途中」(清浦夏実)。

アニメ「狼と香辛料」のOP曲で、作・編曲は吉良知彦。
彼はかつて上野洋子を従えて(
という表現はおかしいが)「ZABADAK」というバンドをやっていた。
とはいっても今でもZABADAKは存在する。上野洋子の脱退後、吉良知彦のソロ・プロジェクトとなり、劇団の音楽制作やこうやってアニメ関係の仕事でも名前を見る。

イントロで「うんうん」と頷いたのは生粋のZABADAK、もしくは吉良知彦ファン。
それとは違い、彼の音楽と疎遠になっていた牧場主のような「2人の頃のZABADAKのファン」はひっくり返るくらいの衝撃を受けるはず。

イントロからして本当にZABADAK。懐かしすぎて涙すら浮かべそうになった。

しっとり、という表現よりもやはり「華がない」という表現の方がピッタリくる。
吉良さんの独走で、歌い手が放置されていそう、という印象を受けてしまうのも昔のままの「吉良節」。歌い手を、ではなく歌い手が、選ぶコンポーザーだ。

でもやっぱりいい曲作るんだよなぁ。
サビでのバッキング・コーラスとか当時を思い起こさせて胸が詰まる。
アコースティック主体の音作りで、やや古臭いと感じてしまうのはリズム感そのものが一昔前のそれだからだろう。

TV版とは違った趣きを楽しめる上、アニメのOPで流れているのが気になった人に対しても興を削ぐものでもないため、特に問題なくオススメしたい。おそらく今年最高の1曲の候補になりうる。

小峰公子の詩もちゃんとした日本語のために、良さこそわからないが、安心できる。
少なくとも現行のチャートにあふれているような、思わず無言で放り投げたくなるような産廃以下の価値しかない詩とは根本からしてかけ離れている。

c/wは「約束のうた」。

おそらくZABADAKとは関係なく聴いた人には「旅の途中」とどう違うのか訝しく思うのだろう。
だが「そうそう、これなんだよ」と拳を握り締める牧場主のような人間も確かにいる。牧場主にとってZABADAKは青春。曲としては「旅の途中」の延長線、というよりも補完に近い。

ただ、真に驚くのはこの2つの「吉良よがり」の曲にしっかりとついてきているボーカルの存在。
若干18とか19の小娘があの吉良知彦の楽曲をしっかりと歌い切っているのには、驚きというよりも上野洋子を思うと感情としては嫉妬すら覚えてしまう。

この子、歌上手いわ。

本当に未成年かと思うほど、歌声に幅と深みがある。言い換えれば幅と深みを加えられる。
ひと昔というよりふた昔くらい前の歌謡歌手を思い起こさせる。基本的に若いというだけで辛口になる牧場主が、特に躊躇なく褒められる歌い手だ。相性もあるのかな。

この子は化けていい。ロリコン向けの雑誌でグラビアやってたらしいが、そんな過去はボーカリストとしての資質を考えれば簡単に吹いて飛ぶほどどうでもいいことだ。

今回のお題2つ目は「歩いていこう。」(吉田旬吾)。

テレビアニメ「レンタル×マギカ」のエンディング曲。
これまた強烈に華がない、というか濃いというか渋い、これがデビュー曲となる新人。
男性の、しかも得体の知れない新人を、男性向けアニメのEDに起用するというのはギャンブルを通り越してただの無謀、と思っていた。

ただ、このアニメ自体はそれほど男性過多というわけではなく、個人的には意外だが女性ファンもそこそこ多い。

原作に興味がないからか、毎週見ているがアニメ作品としては可もなく不可もなく、芝2000の1000万下特別、という感じ()。

しかし楽曲としてはなかなかいい。いや、かなりいい。聴けば聴くほど趣を増す、というか好きになっていく。

融通の利かない、愚直とすら感じる楽曲だが、ここまでくるともはや潔さすら覚える。
このボーカリストを思えばアレンジは相当に苦労したと思うが、その分の出来はもっと評価されてしかるべきだと思う。みんなアレンジメントを軽く見てないか。

惜しむらくは明らかに中孝介と比較されてしまうであろう位置、声質、歌い方。
この起用法から思うにビクターのアニメ部門における(
アニメ部門とは関係ないかもしれないが)隠し玉、秘蔵っ子的な存在なのだろうが、はたして・・・。

これをEDでアニメの主要キャストが歌っている回があったが、あれ、残しておけばよかったなぁ。CD買ってもいいんだけど。

次回のお題は「doll/human」(Lia)と「メグメル〜cuckool mix 2007〜」(eufonius)と「だんご大家族」(茶太)の予定。

メッタクソに書かれてもいい覚悟があるなら、お題も募集しております。

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第210回1月17日(木)
満ち足りた世の中にこそ繁栄する悪がある。

今回のお題は「metafysik」(eufonius)。

「eufonius」はボーカル担当riyaと、トラック・メイキング担当の菊池創によるユニット。
ユニット名は「耳に心地よい」という意味の「euphonious」をもじったもの。おそらくPCゲーム「CLANNAD」で有名になったのではないだろうか。

元々インディーズで活動しており、このアルバムがフルアルバムとしてはメジャー・デビュー作品。たぶん。違ったらごめん。

全11曲の中で気になった曲、気になったことなどを少し書いてみたい。

1.turning world

Bメロでのエポックなアクセントが特徴。
全体的に当たり障りのないアレンジだが、要所に組み込まれたコーラス・アレンジが美味。
薄味というかクリアな楽曲で、良くも悪くもeufiniusらしい1曲。アルバムの導入曲としても適しているように思う。某アニメのオープニング曲だったらしい。あんまりそんな感じはしない。

3.Apocrypha

こちらも某アニメの主題歌だった曲。
様々なギミックを詰め込んだ特異な曲で、売れたのかどうかは知らないがかなり特徴的。
サビでの急激な変化・転調は、心地よい違和感を印象として残す。アニメの主題歌らしいといえばそうかもしれないが、そんなところに収まらない。名曲というよりも、本当に変な曲。

4.ノクターン

どんなアーティストのどんなアルバムにもありそうな(もちろん悪い意味ではない)、”ピアノ伴奏のみのバラード曲”。
こういうのを聴くとriyaもそれほど卓越した歌唱力を持っているわけではないんだな、と思う。声質や歌い方なんかは近年で最も好きなボーカリストだが。
曲としては、シメのロマンティック感なんかを聴いてると、もちろんカンでしかないんだが、これは男の方、菊池創のわがままが詰まった曲なんじゃないかと思う。アルバム作りも色々タイヘンなんだなぁ、と思えてしまう。

6.resonanz

特徴のあるボーカルに、丁寧なサウンド・アレンジを持っているのに、
eufoniusがそれほどメジャーにならないのは、どの曲もどこかで聴いたことがありそうな曲、だからではないだろうか。
牧場主の様に編曲に重みを置いて聴く人間には不思議に思えるが、作曲単位で考えると「ああ、そうかもしれないな」と思えてしまう。そんな曲。相変わらずアレンジは美味なんだが。

10.恋するココロ

いるかどうかはわからないが、この曲でeufoniusに触れた人はアルバムを通してのカラーに驚くかもしれない、健全かつパステルカラーな曲。
特長に欠けて面白みがない、と感じる人も多いだろうが、アルバムの中の清涼剤というか、箸休めというと語弊があるかもしれないが、そういう位置づけで聴くと、これはこれでアリなんじゃないかと思う。

11.楽園

ラスト・トラックに控えるのは渾身の力を込めた純正バラード。
既出曲だが、それも前述「Apocrypha」のc/wであることに対して首をかしげざるを得ない楽曲。
「これが私たちです」と楽曲が胸を張る。ここまでの10曲がどこかへ吹き飛びそうなほどのパフォーマンスとクオリティにただ唖然とするばかり。
まるで「この曲がeufoniusであり、そしてmetafysikのメッセージング・ナンバーだ」とでも言っているかのようで、個人的にはこの1曲だけでもこのアルバムの価値を見い出せてしまうほどの内容だった。

惜しむらくはボーカルの魅力に比べて、メディアへの露出が少ないからだろうが華がないこと。
そしてもちろん個人の嗜好にもよるのだろうが、詩に全くといっていいほど魅力を感じないこと。詩に関しては自分でも全体的に評価は厳しいので仕方ないところはあるが。

アルバムとして、というよりも全体的に良い意味で薄味で、確かに「耳に心地よい」音楽だろうと思う。
20代がトラック・メイクしてるとは思えないほどアレンジが落ち着いていて、かつ独創的であり、なんというか気の利いたおつまみのように聴くほどに味を増す。

人にすすめるとすれば少し躊躇もするが、¥3,000くらいの価値は十分あるだろう。

レースで言うなら中距離の芝GIII戦、朝日CCクラス。

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第209回7月3日(火)
復讐を許す世の中に栄光は無い。

今回のお題は「SHORT CiRCUiT II」(I’ve)。

主にアニメやゲームに楽曲を提供する音楽制作集団「I’ve」のコンセプト・アルバム第2弾。
このアルバムに関しての作曲・編曲は高瀬一矢、中沢伴行、C.G.mix、井内舞子、KOTOKOの5名。ボーカルはKOTOKO、詩月カオリ、島みやえい子。

「I’ve」のコンセプト・アルバムとは、ファンの間で「電波系」と称される、非常に尖ったトラックやボーカル曲を集めたアルバムを指す。

前作「SHORT CiRCUiT」(同)からもどんどん輩出されていつか出るだろうと思ってたが、割りに早い発売となった。

で、全14曲なんだが、明らかに電波系じゃない楽曲もいくつかある。

このアルバムで牧場主が最もお気に入りなのが、それはもう他を圧倒的に引き離して、「I’m home」(詩月カオリ)。

「明らかに電波系じゃない曲の1つ」で、「I’ve」がたま〜に放つ純正バラードで、しかも作・編曲は高瀬一矢。
正直、前作の中の「レモネード」(同)級の曲が1曲でもあればいいな、と思っていたが、この曲も中々どうして。明らかにコンセプト・アルバムの中で毛色が違うのはご愛嬌か。

というよりは、本当に凄まじいほどのコンセプチュアリングの中、高瀬一矢が必死に抵抗した「アンチ・コンセプト・トラック」な気がする。

全14曲のうち、ゲームの主題歌ではない、いわゆるこのアルバム用のオリジナル楽曲は3曲。
それがこの「I’m home」と「めぃぷるシロップ」(KOTOKO)、ラスト・トラックの「Double HarmoniZe Shock!!」(KOTOKO to 詩月カオリ)。

このアルバムがどういうアルバムかは、その3曲、しかもトラック順にラスト3曲に詰め込まれたこれらを聴くだけでいい。

まず「I’m home」

「場違い」。語弊を覚悟で一言で言うならそれ。
系統的には「open」(詩月カオリ)に近いが、「I’ve」では貴重なスロー・バラード。
もはや「I’ve」の特徴の1つでもある「毒気」がまったくない。拍子抜けするくらいにただメロディ・ラインを聴かせる真っ向勝負な点もまた珍しい。

詩月カオリの甘ったるい、アニメ声とはまた違った少女的な声質がよく合う。
KOTOKOは良くも悪くも何でもソツなく、というよりは可もなく不可もなくこなしてしまうので、詩月カオリの方が合うのだろう。
1曲目からずっと電波系が続いて、いい加減耳と精神が疲弊しきった頃、12曲目に訪れる一服の清涼剤。最初は井内舞子の曲かな、と思ったら高瀬さんで個人的にかなり驚いた。

来月発売される詩月カオリのメジャー・デビュー・シングルのc/wがこの曲のリアレンジ曲。
マキシ・シングルは基本的に買わないんだが、せっかくデビューなんだから買おうと決めていたが、これで買わない理由がなくなった。

そして「めぃぷるシロップ」

「場違い」。語弊を覚悟で一言で言うなら、やっぱりそれ。
政治評論家の三宅先生が聴いたら心臓発作で倒れながら「これだから日本の行く末は・・・!」と断末魔の叫びを放つだろう。

ムチャクチャ。この6文字を1兆回繰り返せばこの曲を表現できる。
「I’m home」がアンチ・コンセプトなら、この曲はコンセプトを極限まで追求した、究極と至高を兼ね備えながらも常軌を逸した曲。

牧場主は「I’ve」であろうとなかろうと、この曲以上の電波ソングを知らない。というより、少なくとも現世では存在しないはず。してたらとっくに破滅してる。地球が。

いや、こりゃすごいわ。腰が抜ける。唖然とする。作・編曲のC.G.mixもすごいがKOTOKOもやっぱりすごい。
これまでに何度も書いたし今後も書くが、このテの詩を書かせれば他の追随を許さない。このコンセプト上でなら、リリストとしての彼女を両手離しで褒めたい。

でも、曲自体が崩壊してるかといえば決してそうではなく、
詩とボーカルがそうさせてるだけで、やっぱりアレンジに注意して聴いてるとよく出来てるな、と思う。
C.G.mixらしい軽妙でリズム感に拘った1曲で、いわゆるテクノ・ポップ。いやしかし、これは冷静に聴いていられない。おかしい。この曲は何かがおかしい。

この曲を中国共産党の幹部に聴かせれば「ごめんなさい日帝様。もう逆らいませんごめんなさい」と泣き叫びながら土下座して服毒自殺するだろう。

この曲だけで東アジアくらいもう1回征服できる真顔)。

また落ち着いたらコメントしよう。しばらく無理だ。

ただ、冷静に評価できるか、精神に異常をきたして死ぬかどっちが早いかはわからない

最後の「Double HarmoniZe Shock!!」

アルバム・タイトルこそ「SHORT CiRCUiT II」だが、これはもちろん前作があったため。
もしこのアルバム独自にアルバム・タイトルを定めるなら、この曲がそのまま刻まれるだろう。ラスト・トラックであること以上に曲のクオリティがそうさせる。

ボーカルはKOTOKOと詩月カオリのツイン・ボーカル。
最初からこの2人用前提に作られていて(
でなければ1曲として1人では歌えない構造)、色々と興味深い。
これも電波系ではなく、むしろインストに注意して聴けば「LAMENT」(KOTOKO)や「Collective」(同)などに近く、どこか恐さを感じる。もちろん作・編曲は高瀬一矢。

というよりは「Short Circuit」(KOTOKO)に近いのか。
そう考えるとたった2枚でも頑なに別の意味でコンセプトを踏襲しているというか一貫した意志を感じる。
2人のボーカルに関しては、相性がいいのか、いいね。これまでも2人のツイン・ボーカル曲はいくつかあったけど、この曲では2人が対等にバランスされてるのが心地良い。

あともしかしてライヴを意識してるのかな、というのも感じる。
おそらく盛り上がること間違いないだろうし、エレキ・ギター、ベース、ドラムスと演奏側の見せ場もたっぷり。
リズム隊が先導するテンポは軽妙なのに、骨組みがしっかりしてるというか、2人のボーカルとのアンバランスさもあってこの曲もちょっと異質というか、一言では表現しにくい。

しかしまあ、このオリジナル3曲のためだけでも買ってよかったと思う。
他の11曲の中にももちろん好きな曲もあるし、総じて個人的に言えば、良いアルバムだったとしたい。

ただ、人生上所持したアルバムの中で、最も人にオススメできないアルバムには間違いない。

「めぃぷるシロップ」の1曲だけで

でも、どうもこの曲が1番人気らしいんだよなー。わからんではないが・・・。
牧場主は「I’m home」>「Double HarmoniZe Shock!!」>「めぃぷるシロップ」>>>他に3〜4曲、といった感じかな。

他の曲についてもまた機会があれば。

以下、今回の参考リンク。

・「SHORT CiRCUiT II

・「SHORT CiRCUiT

「I’ve」公式

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